つかこうへいTRIPLE IMPACT『いつも心に太陽を』レビュー。愛は誰も救わない、だろうか。

 愛は誰も救わない、だろうか。

 

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 初日に前説として登場した、生前のつかこうへい氏の舞台のプロデューサーであり、今作の演出も手がけた岡村俊一氏は語る。

「例年、つかこうへいさんが2月から3月の、冬から春先に紀伊國屋ホールで公演するのが習わしとなっていて。他界された翌年も劇場を予約していました。もちろん、やらないという選択肢もありましたが、せっかくだからと上演を決めて、かれこれ五年となります」

 その五年目となる今年、つかこうへいトリプルインパクトと題して選ばれた演目は『初級革命講座 飛龍伝』と『ロマンス2015』とその原作となる『いつも心に太陽を』の三作。そして2月24日、最後の上演作となる『いつも心に太陽を』の幕が開いた。

  物語は至ってシンプル。
 オリンピック出場をかけた第18回和歌山国体の男子水泳1500m自由形のプールで出逢ってしまった、ふたりの選手の始まりと終わり。愛するということは、どこまでも肯定することであり、支えるということは犠牲になり己を捧げることとなのか。あるいはすべてに目を瞑り、そこにどっぷり甘えることなのか……。
 すがる男と振り切る男。
 この作品を、恋愛譚と観るのも勝手。
 ゲイでホモでオカマの痴話喧嘩と観るのも勝手。
 そして、夢を諦める物語と傷つくのも勝手。
 非道い話と思うのも勝手。
 ほんとうにとてつもなく辛い舞台だと叫んで、わんわんと泣くのも勝手。
 高橋龍輝さん演じる谷口が柳下大さん演じる青木シゲルに「きれいだよ」と伝えるたび、シゲルが谷口に「俺、きれいか?」とたずねるたびにふたりのどこかしらがみしみしと軋み、歪んでいくようで。

 その「きれい」という単語には無数の思いが秘められていることに、互いに気付いていながら、ことばで殴りあっていく、そのことがとてつもなく寂しい。

 どんなに無体にされても、どこまでもシゲルにすがる谷口は愚かで美しい。
 愚直なまでに愛することは不幸なことなのか―—。

 彼らが舞台で、どう在るのかは、自身の目で確かめてほしい。
 劇場という空間で、和歌山国体の青空のもと、煌めくプールでともに泳ぐ、満ち足りた彼らと同じ時を過ごせたことを幸せに思う。あの瞬間、満ち足りてしまったからこそ、その先に待つ日々が欠けていくしかなかったとしても、きっと彼らは生きていく。青空に太陽を思いながら。
 紀伊國屋ホールでの上演は、3月2日(月)まで。
 大阪大千穐楽は、3月14日(土)にて。

 

つかこうへいトリプルインパクト

「いつも心に太陽を」
 作:つかこうへい
 演出:岡村俊一
 出演:柳下 大 高橋龍輝 武田義晴 須藤公一 鮎川太陽 土井一海 高橋直人(※高は旧字) 大石敦士

 ほか飛び入りゲスト多数予定

 公演日:2015年 2月24日(火)〜3月2日(月)
 会場:紀伊國屋ホール ※当日券発売中

 大阪:森ノ宮ピロティホール
 2015年 3月14日(土)
 「いつも心に太陽を」
 大阪千穐楽特別公演決定!!

 

つかこうへい トリプルインパクト

 

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