スターダストプロモーション若手俳優集団「ぱんきす!」&スズカツってナンだ!?
2016.6.19
後ろ左から:ユウセイ(結木滉星)スナギ(杉本海凪)ミツケン(三本健介)マフミ(大山聖文)/前左から:フッチン(渕野右登)モユキ(石田知之)ターク(佐藤匠)
スターダストプロモーションが放つ、若手俳優集団「ぱんきす!」って、ナンだ!?
よくわからないけれど、でも、とんでもなく、おもしろいモノ、が、ここにある──鈴木勝秀インタビュー&「ぱんきす!」3次元完全紹介をお届け!!!
『ぱんきす!』(@pan_kis)が誕生したのは2015年1月。日本初という5次元「アニメ・舞台・アクター・コミック・音楽」の5つのメディアで展開、なるコンセプトで誕生した、この企画の3次元をになうのが「舞台」版。
板の上でつづられるのは、“音の精霊”達の学び舎、“聖ミューズ学院“に集う、音楽精霊たちの日々を描いたアニメシリーズ『ぱんきす!2次元』から、外へと飛び出し楽器もできないくせに、バンドをやろうと集まった、パンクキッスこと「ぱんきす!」たちの青春譚。
その、過去公演については以下に記すとして……声を大にして伝えたいのは、その試みと志。
脚本・演出を手掛けるのはスズカツこと、鈴木勝秀(@suzukatz)。今年初め、る・ひまわりの「僕のリヴァ・る」(最善席稽古場レポはこちら)が話題となり、9月には脚色・演出を手掛ける、*pnish* vol.15 『サムライモード』 も発表され、若手俳優演劇界では近年、名前を見かける存在だが、その独特な世界観は小劇場界をはじめ演劇界にも支持する人は多い。
────ここで少しだけ、鈴木勝秀という人が創り出す世界と私が、どう出逢ってしまったか? を記します。それは今から四半世紀(!)も前のこと。鴻上尚史さん主宰の『第三舞台』をはじめとする、空前絶後の小劇場ムーブメントの一端を担った「早稲田大学演劇研究会」という「空間」がありました。
……そう、あそこは、恐ろしくヘンな磁場がある「空間」でした。今はもう部室も建て替えられ、きれいになっているそうですが、当時はボロい長屋みたいな部室棟とトタン屋根の倉庫的建物と、その裏には所狭しと瓦礫(当時の私にはそう見えた……)が放置された(後日、それらは、彼らが自分たちの手で建てる大きな大きな劇場となる黒テントや客席となる、大切な資材だと知るわけですが)、だだっぴろい土地があり。そこで過ごす人々は、ただただ芝居だけを作って暮らしていました。本当に、ただただ芝居だけを作っていたのですが、その辺りの歴史は私ごときが語ることではないので、先へと進みます。
と、まあ、ひょんなことから、十代でこの地に迷い込んだ私は、演劇ド素人だったにも関わらず、この空間で人生が狂うキッカケとなるモノに遭遇するのです……そのひとつが、スズカツ氏の作、演出(なんだったら出演も!)の舞台でした。
セットらしいセットがあるわけでない真っ黒でシンプルな板の上、静謐な空間に己の台詞だけを吐き出す役者たち。美しくも鋭い照明、そして(スズカツ舞台でお馴染みの)ノイズと楽曲があふれ、おそろしくスタイリッシュな世界に在ったのは、そこに立つ者たちが「今」を、あるいは「自分」を、餓(かつ)える物語……これ、なんだ!? 一気に魅せられました。
つまり。
自分のなかでシンプルに言語化すると、スズカツ氏が手がける「ぱんきす!」は当時の、大隈講堂裏、そのものでした。
言うなれば「煌めく可能性」であり「大いなる実験」で「永遠に続く遊び」。
そして、鈴木勝秀は語る。
「僕が早稲田の学生だったころ、演劇はものすごくカッコイイ表現手段だった。天井桟敷(寺山修司)、状況劇場(唐十郎)、早稲田小劇場(鈴木忠志)の御三家をはじめ、小劇場に稀代の劇作家、演出家が集い、天井桟敷のポスターを横尾忠則が手がけたり、状況劇場の音楽を山下洋輔がやったり、美術、音楽ともにたくさんの才能が集まっていました。
それに僕は、三島由紀夫にも多大な影響を受けていたので、表現手段として演劇を選択するのは、それほど難しいことではなかった」
だからこそ、変わらず同じことを続けている──とも。
「たとえば、ジョン・レノンやデヴィット・ボウイといった、ある時代を成し遂げた存在と同時代を生きる。それはとても幸せなことだと思うんです。さらに、その同時代を作る……ということは、もっともっと幸せなことなんです。彼らにそういったことを経験してほしい。
シェイクスピアは400年間上演されて続けていて、その事実には敬意を表するけれど、自らの手でシェイクスピアになれる可能性を作り出せたら、もっともっとおもしろいはず。でも、演劇は一人ではできない、だから、本当に一緒にやれるやつを一人でも多く見つけたい……そういう思いが、僕のなかにずっとある」
そのひとつが「ぱんきす!」なのだ。
そこで、彼らに課していることのひとつに「全部、自分の手で創る」ということがある。
「今回、彼らの舞台の背景を飾った、横断幕(3尺×3尺)は、自分たちで作ったんです。
布とネオカラーを渡して『好きにしろ』と言ったら、自分たちの手に塗りだして、ペタペタとやりだした。文字の大きさもバランスもいいとはいえないし、よく見ると手型があちこちに付いているけれど、でも、この横断幕を自分たちだけで作った、という経験は彼らにとってかけがえのないものになる。だからこそ、僕が用意したものを全部押し付けるのではなく、デザインもダンスも全部、僕も含めた『ぱんきす!』全員で考えている」
それらを公演として世に出せるところまでは鍛えるけれど、その先は自らががんばることだとも。
「大隈裏時代から7年間、池田成志や勝村政信、松重豊や田中哲司なんかと一緒に、ZAZOUS THEATER(ザズウシアター)を続けましたが、やっていることは今も変わらない。『この俳優さんを呼んだら、舞台の動員が増えますよ』ではなく、新たに生まれて育つ場を作りたい。だから、『ぱんきす!』もまずは10年、続けてほしい。
作曲だって100曲作って、ようやく1曲、名曲ができるかどうか……なんです。いきなり1曲目から傑作なんて作れないから。それが、そのまま彼らを観続けて応援してくれる人たちへの答えだとも思うし」
だからこそ、受け手にも楽しんでほしい、と願う。
「同時に『ぱんきす!』を応援している人、興味を持ってくれる人はもっともっと貪欲に参加してほしい。『お金払ったんだから、楽しませてください』よりも『思いっきり楽しんでやる!』という意思で大切な自分の時間を過ごすことは、きっと生きる糧になるし、絶対に心躍るから。
それらが渦となって時代を作っていけたらいい……誰よりもまず、僕自身がそうだから。このまま、ずっと自分がおもしろい、と信じたものを作り続けたい。そうやって、生涯、遊び続けたいですね」
届いた言葉とともに、横断幕をバックにモーツァルトの交響曲第40番をロックアレンジした『パンク・キッス!』動画を最善席にて本邦初公開。歌詞も深い。
ちなみに「なぜ上半身裸なのか?」という問いに、早逝した天才、シド・ヴィシャスをイメージしている、という実に真摯な答えが返ってきたことも、ここに付記。
『パンク・キッス!』フルコーラス動画
そんな彼らの歩みをこちらに。
第1回:記念すべき第1回公演は、2015年2月13日〜15日に新宿スタジオアルタにて『ぱんきす!3次元』として上演。
メンバーは、マツケン(松井健太)、ターク(佐藤匠)、モユキ(石田知之)、マフミ(大山聖文)、ユウセイ(結木滉星)の5人。しかし、それぞれに方向性はばらばらで、唯一のオリジナル曲は、モユキがモーツァルトの交響曲第40番をロックアレンジした『パンク・キッス!』のみ。
しかし、そんな彼らのもとに訪れたのは、弁護士のシマダ(島田惇平)。果たして、彼の出した条件は、マツケンの祖母が遺した9000万円の借金(!)の肩代わりに、彼らが売れることだった!?……かくして「3年間」という期限付きで、祖母がかつて暮らした洋館で暮らすことを許された──同時に移動用の中古ワゴン車の購入費100万円を貯めるため、シマダの部下としてアルバイトで探偵事務所を開くことに。その、初めての事件とは?
第2回:続けての公演は、2015年6月26日〜28日に『ぱんきす!3次元〜ストレンジ・カインド・オブ・ボーイ〜』として六本木Super Deluxeにて上演。
「パンクの魂を学びにロンドンへ行ってくる。いつ帰るかはわからない。はあ、イライラ、モヤモヤ、どっかーん! じゃあな」
こんな手紙を残してマツケンは旅立った。残されて困惑するメンバーに届いた依頼は、名家シロノ家の跡取りでありながら、家出したジントン(吉田仁人/5人組ボーカルダンスユニット『M!LK』として活動中)の捜索。しかし、探すまでもなくジントンは「ぱんきす!」の自由なライヴに心惹かれ、メンバー加入を賭けてダンスバトルに挑む!? 一方、マツケンが残していった曲が見つかり、メンバーはそれぞれの思いを込めて歌詞を付ける。
第3回:2015年8月28日〜30日、『ぱんきす!3次元〜ファースト・ラスト・ギグ?〜』と題して新宿スタジオアルタにて上演。
新曲を引っさげて、初ライブに乗り込んだ「ぱんきす!」のメンバーだったが……なんとマネージャーとなったシマダ、痛恨のミスで別グループのSECRET GUYZとダブルブッキングしてしまう。かくして、2つのバンドのライブパフォーマンスが始まった!?
第4回:そして、今回。『ぱんきす!3次元 〜Rebirth&Growth 復活、そして増殖〜』と題して、2016年5月28日・29日、川崎市アートセンター アルテリオ小劇場にて上演。
マグライトを手にするメンバーとゲストのLittle☆Eに囲まれ、シマダ(島田惇平)が意味深にたたずむ。
「きれいはきたない、きたないはきれい」ノイズのなか、そう呟く「彼」の目的は──?
ジントンがシロノ家に戻り、シマダも寄り付かなくなった昨今、バンド活動の活性化を図るため、新メンバーを募集することに。オーディションに訪れたのは、スナギ(杉本海凪)、ミツケン(三本健介)、フッチン(渕野右登)の3人。それぞれの個性を活かし、みごと合格した三人と、ターク、モユキ、マフミ、ユウセイと7人の共同生活が始まった。
しかし、そこにジントンの従兄弟であるシロキ(福本有希 PrizmaXパフォーマー)が訪れ、リーダーの座を宣言する……改めてリーダーの資質を問われるモユキ、フロントマンとして自分勝手でいたいと宣言するユウセイ。己が「ぱんきす!」で、できることを模索するメンバー。明滅する美しい照明に、空間を襲うノイズ、シンプルな美術は変わらず、スズカツ世界、そのもの。
やがて。
それぞれにやるべきことを見つけ出し、新生「ぱんきす!」のライヴが幕を開け、ミツケンによる新曲『リバース&グロウス』も披露。新たな一歩を踏み出したのだった──もう、彼らの歩みは止まらない。
舞台は物語とライブとが、織り交ぜられて届けられる。すべてが彼らにとっては、伝えること、なのだ。
その熱がたまらない。つたないかもしれない、足りないところも多いだろう。
けれど、
板の上の彼らが誰よりも、とてつもなく楽しそうで幸せだ。
演じ手、受け手が一緒に、ないまぜになって、自分たちの歴史を刻む。
それは、とてもおもしろくて、スリリングだ。
数字を持つ存在に頼らず、自分たちの手で、という矜持も美しい。
次回公演は未定だが、機会があれば、一度はふれてほしい、その熱を応援したくなる。
と、いうわけで最後にメンバー紹介もお届け。
これが「ぱんきす!」メンバーだ!!!
マフミ(大山聖文)
1994年5月11日生まれ/TV「仮面ライダーフォーゼ」(’11 EX)、「スプラウト」(’12)などに出演し、舞台「メッサーシュミット先生」(’14)、恵比チリDAN(仮)完全自主プロデュース舞台「MEMENTO MORI」(’16)にも出演している。
ターク(佐藤匠)
1996年12月8日生まれ:TV「35歳の高校生」(’13 NTV)、映画「鈴木先生」(’13 角川書店/テレビ東京)、「学校の怪談/呪いの言葉」(’14 東宝)などに出演、2014年8月には蜷川幸雄演出の舞台「ロミオとジュリエット」、恵比チリDAN(仮)完全自主プロデュース舞台「MEMENTO MORI」(’16)に出演している。
モユキ(石田知之)
1991年3月29日生まれ:「イタズラなKiss~Love in TOKYO」(’13 フジテレビTWO)、映画「うわこい」(’14 エスピーオー)などに出演し、舞台「ライト・リライト」(’12)、「STORM LOVER~波打ち際の王子SUMMER!~」(’14)、「キリトリ4」 (’14)、恵比チリDAN(仮)完全自主プロデュース舞台「MEMENTO MORI」(’16)など多くの舞台にも出演している。
ユウセイ(結木滉星)
1994年12月10日生まれ:TV「弱くても勝てます~青志先生とへっぽこ高校球児の野望~」(’14 NT)、「黒服物語」(’14 EX)や、舞台「キリトリ II」(’13)、恵比チリDAN(仮)完全自主プロデュース舞台「MEMENTO MORI」(’16)にも出演、「スニッカーズ」のCMにも登場している。
シマダ(島田惇平)
1989年10月21日生まれ:舞台「ソラリネ。#12『Anytime.Aniwhere』」(’14)、「キリトリ4」(’14)、「56W.X~ぼくのサンタ クロース~」(’14)、恵比チリDAN(仮)完全自主プロデュース舞台「MEMENTO MORI」(’16)など多くの舞台に出演している。
スナギ(杉本海凪)
1995年3月31日生まれ:劇団EXILE公演「それいけ小劇場!!」(’14)、恵比チリDAN(仮)完全自主プロデュース舞台「MEMENTO MORI」(’16)
フッチン(渕野右登)
1995年2月14日生まれ:TV「但し、○○に限る。」(’16)、恵比チリDAN(仮)完全自主プロデュース舞台「MEMENTO MORI」(’16)
ミツケン(三本健介)
1992年10月4日生まれ:恵比チリDAN(仮)完全自主プロデュース舞台「MEMENTO MORI」(’16)
2016年6月 おーちようこ 写真は公式より提供。禁・無断転載